将棋は逆転のゲームです。「最後に悪手を指したほうが負ける」と言われているくらい。この記事を読みに来た方はもちろん、逆転負けをして頭を抱えた経験がない人は居ないでしょう。もし居るとするならば、何かに挑んだことがない人くらいです。
序盤で有利になろうが中盤で有利になろうが終盤で有利になろうが、最後の最後に逆転されたら負けなのです。それが将棋の現実。
ですが、たった3つのことを心がけるだけで逆転負けをぐっと減らすことができます。絶対に逆転されないとまでは言えませんが。
というわけで、逆転を防ぐためのコツを書いていきます。
読み抜けを無くすこと
これはもう当たり前過ぎて「身も蓋もない」と言われそうですが大前提なので。
単純な読み抜けを減らすためには日頃の勉強で読む力を底上げしつつ、たくさん対局してたくさん観戦していろいろな手を知るくらいしかありません。
対局中に知らない手を見つけ出すことは大変です。しかし、一度でも見たことがあれば同じような局面になったとき「こんな手があったなぁ」と思い出せます。思い出すことさえできれば今その手が成立するか読みに行けるわけで。
局面の単純化を目指す
旧ブログで以前「逆転したいのならば局面を複雑化すると相手が間違えやすくなる」と書きましたが、その逆を行くだけのことです。
私の知っている代表的な指標が下記のいくつか。
質駒(相手に取られるおそれのある駒)を減らす
相手に取られる駒がある場合、それを使われる筋を常に読まねばなりません。相手の駒台にその駒が一枚乗っていると仮定して読まされることで、読まなければいけない筋が大幅に増えます。なので、取られるおそれのある駒をできるだけ作らないようにすると少しラクになります。
例をひとつ挙げましょう。
例えば自分の桂馬が相手の飛車に睨まれているパターン。
自分の桂馬と相手の飛車との交換は本来こちらの得なので望むところ。
ですが、飛車を取り返した瞬間に相手が桂馬を使ってこちらの玉を詰ますことができるとしたら……?
こうなるとこちらは飛車を取り返せないので、交換が成立しません。なので、桂馬を持たれていると仮定して指し続けなければいけないのです。質駒の恐ろしさ、わかりましたか?
手番を無駄に消費しない
将棋初心者がよくやってしまうパターンのひとつに「手番の放棄」があります。将棋は交互に一手ずつ指すゲームですが、その局面局面に手番というものがあります。
手番についての簡単な説明
手番という概念については細かく突き詰めていくととても複雑なので、別記事で補足しますが、ざっくり言うと主導権のようなもの。
例をひとつ。「受けないと次に詰みがありますよ」という詰めろ。これは自玉に詰みがなければ相手は受ける以外の手を選べません。選べば敗北が待っていますから。これは文句なく手番を握っています。
よくある例をもう一つ。大駒や小駒を一度にまとめて交換。最後に相手がこちらの駒を取り返しました。ここで「駒を打つ」という選択肢がお互い発生するわけですが、「次に効果のある手を指せる」のであれば自分が好きに指せます。しかし、相手からの一手の方が強烈だった場合、こちらはそれを受けなければいけません。この場合、次に「より成果の見込める手」を持っている方が手番を握っています。
手番を無駄に消費するとはどういうことか
話題は戻って手番を無駄に消費するなというお話に。
初心者~級位者の将棋では「せっかく手番を握ったのに放棄してしまう」ことがとても多いです。
たとえば駒得を狙うために駒を打ち込むパターン。さてこのパターンで駒得をした後に勝利につながる継続手はあるのでしょうか?取った駒をすぐに使って強烈な一撃がありますか?もしそれらがないのであれば、相手は「無視すること」が出来ます。つまり相手が手番を握るわけです。ここで、こちらが次に駒得をするよりも価値のある手を相手に指されてしまうと形勢は一気に悪くなるわけで。
このような逆転劇は級位者同士ではよく起こります。なので、はっきりとは理解できていなくても「手番は大事」ということを意識していくようにしましょう。
いまは理解できていなくても、初段を超えたころには手番の大事さが解ってくると思いますので、騙されたと思って。
駒がたくさんぶつかった状態を作らない
これは読んだだけでわかるのではないでしょうか。駒がたくさんぶつかっている場合、どの順番で取り合うかだけで全く違う展開になります。となると駒がぶつかった場所を複数作られるだけで、読むべき量が爆発的に増えます。当然、読み抜けも増えますし、読み切ることが難しくなるわけで。
そうなると間違えることが増えますので、逆転負けを喰らいやすくなります。
浮き駒は消しておく
浮き駒(離れ駒)とは、相手に取られたときに自分の駒で取り返せない状態の駒。
これがあると相手の付け入る隙になりやすく、投了級のミスを犯す恐れが。よくあるパターンでいえば角や飛車での「王手なんたら取り」ですね。
ですが、最初から浮き駒が一枚もなければ「王手なんたら取り」を食らっても致命傷にはなりにくいはず。王手を防げばもう一方の駒が取られても取り返せるので。
浮き駒をなくしておくことで、読まなければいけない受けを減らすことが出来ます。
「いま勝負を決めに行く必要があるのか?」を常に考える。
局面は優勢で相手玉が詰みそうだけど、詰みまでは読み切れていない……みたいな場合、本当に詰ましにいく必要はあるのかを考えましょう。
自玉に即詰みが無ければ必至をかけるだけでも勝ちです。相手からの早い攻めがない局面ならば、切れない攻めを繋げるだけで勝勢です。
その状態でリスクを負って決めに行って失敗して逆転、なんてことが級位者ではよくあるのでそれを減らすだけでもだいぶ違います。
「長い詰みより短い必至」なんて格言もあったりするくらい。読み抜けの起こりやすい初心者~級位者ならなおさら。
まとめていないまとめ
「端に手をかけると勝っていても負けていても逆転が起こりやすい」みたいな細かい小ネタも他にいくつかありますが、まずは今回紹介した内容を心がけるだけで逆転されることが大分減ります。これらを意識しながら指すようにしてみてください。
まったくの余談ですが私が将棋ウォーズで逆転されるのは、対局中に来客があって時間が切れるパターンが一番多いです(10回以上喰らっています)
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